真珠の如き煌きAdrienne Pieczonka

Adrienne Pieczonka(アドリアンネ ピエツォンカ)は1963年カナダ生まれのソプラノ歌手
ドイツ物を中心に、イタリアオペラのドラマティックな役柄も歌うが、
何と言ってもこの人が素晴らしいのはリートとナクソス島のアリアドネのアリアドネ役。
アリアドネは幸運にも生で聴く機会に恵まれ、その硬質で気高く無駄なヴィブラートの無い美しい響きに魅了された。

声質的にも、あまりドラマティックな役だと声量が足りないなどの批判を受けることもあるようだが、
少なくともアリアドネではリヒャルト シュトラウスの壮大なオーケストラにかき消されて聴こえない。ということはなかった

Es gibt ein Reich, (一つの豊な国がある)

こちらがアリアドネ役の有名な独唱部分になる訳だが、録音状況の問題で音が割れているところがあるのが残念だが、
中低音の響きの美しさは十分に伝わるのではないだろうか。
当然ソプラノ歌手なので高音は大事なのだが、歌の上手い下手を決めるのは高音が得意か否かとは別問題である。
別にハイC(音域のことがよくわからない方はこちらを参照ください)が美しく出るから最高の歌手かと言えばそうではないように、
結局大事なのは誰でも出せる音を誰よりも美しく歌えること。これに尽きます。

そして彼女はそういうソプラノです。
だから、ハイFや超絶技巧や、他を圧倒する声量が無くても一流歌手であると断言できるのです。

それを端的に表すのはやっぱりリート演奏
Rシュトラウスの歌曲から Rote Rosen(赤いバラ)

 

シュトラウス最初期の歌曲ですが、実に美しい作品です。
是非歌詞を見ながら味わってみてください。

Weisst du die Rose,die Du mir gegeben?
Der scheuen Veilchen stolze,heisse Schwester;
Von Deiner Brust trug noch ihr Duft das Leben,
Und an dem Duft sog ich fest mich und fester.

Ich seh Dich vor mir,Stirn und Schläfe glühend,
Den Nakken trotzig,weich und weiss die Hände,
Im Aug noch Lenz,doch die Gestalt erblühend voll,
Wie das Feld blüht um Sonnenwende.

Um mich webt Nacht,die kühle,wolkenlose,
Doch Tag und Nacht,sie sind in eins zerronnen.
Es träumt mein Sinn von Deiner roten Rose
Und von dem Garten,drin ich sie gewonnen.

君はこのバラ知っているね 君はぼくにくれたよね?
恥ずかしがりなスミレの 堂々として情熱的なこの姉妹のことさ
君の胸から今もなお命の香りを発し続けて
そしてその香りを強く 一層強くぼくは吸い込んだ

ぼくは君を目の前に見る、燃え立つ額とこめかみ
すっと伸びた首筋、手は柔らかくて白い、
瞳の中はまだ春だけれど、姿は満開の花だ
野原が夏至の頃に花でいっぱいになるように

ぼくのまわりには夜が広がる、涼しく、雲もない
しかし昼間も夜も、ひとつに溶け合っている
ぼくの心は君の赤いバラと
ぼくが彼女を勝ち取った庭の夢を見ている

 

いかがでしょうか。
彼女の声とシュトラウスの音楽の相性は抜群です。
逆に上品過ぎてイタリア物では物足りなさを感じてしまうというのはあるのですが、
逆にこれだけの美声の持ち主はそうはいませんから、あまりイタリア物には手を出さず、
末永くドイツ物、特にシュトラウス作品を中心にオペラ歌手と言うより、コンサート歌手に重点を置いて欲しいな。
というのが身勝手な願望であります。

最後に、こちらもシュトラウスの短い歌曲からEinerlein(一つのもの)

Ihr Mund ist stets derselbe,
Sein Kuß mir immer neu,
Ihr Auge noch dasselbe,
Sein freier Blick mir treu;

O du liebes Einerlei,
Wie wird aus dir so mancherlei!

彼女のくちびるはいつでも同じままでも
そのキスはぼくにはいつも新しく
彼女の瞳も同じだけど
その愛らしい眼差しはぼくには忠実だ

おぉ 君よ 愛しき変わらざる者
何て多くのものが君から得られるのだろう

 

聴き終わった後にそこはかとなく切なくなりませんか?
アレ自分だけ。。。
こんな純朴な音楽を1918年(50代半ば)で作曲できるシュトラウスの感受性というのは改めて驚きますね。

 

そんな彼女のお勧めCDはやっぱりリートです。

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B00XWV8Y5M/ref=as_li_tl?ie=UTF8&tag=pota52-22&camp=247&creative=1211&linkCode=as2&creativeASIN=B00XWV8Y5M&linkId=81d5b7c0a2e65e302cfd1fdf6fc5b36f

添付しているYOUTUBEの音源もこのCDからなので、琴線に触れた方は持っていても損はしない一枚。
逆にイタリアオペラアリアなんかは個人的にはお勧めしませんが、一応CDを出しています。

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B002DQ6L84/ref=as_li_tl?ie=UTF8&tag=pota52-22&camp=247&creative=1211&linkCode=as2&creativeASIN=B002DQ6L84&linkId=e3c788683158d92583f96b5335d9a036

コメントする