日本ではなぜか評価が低い名テノールRamón Vargas

Ramón Vargas
Tenor Ramón Vargas is standing in front of a black backdrop, wearing a tuxedo. Next to him are microphones.

Dmitry Khvorostovsky’s anniversary concert, St. Petersburg, 2013
Born 1960 (age 58–59)

México City
Education
  • Cardenal Miranda Institute, México City
Occupation Operatic tenor
Website www.ramonvargas.com

Ramón Vargas(ラモン ヴァルガス)1960年メキシコ生まれのテノール
世界的には21世紀初頭で最も優れたリリックテノールの一人という評価を受けているが、
日本ではそれほど評価が高くない。

ヴァルガスの特徴は何と言っても響きの美しさ。
常に端正で誇張しない表現。
声を逸脱しないレパートリー選び。

逆に、華やかさや派手さとは程遠い。
恐らくこれが日本で知名度が今一つ高くない要因だと思われる。

 

彼のレパートリーは、
若い頃はモーツァルトやロッシーニ、ドニゼッティ、プッチーニのラ・ボエーム
後はフランス物マスネやグノーなど、レッジェーロ~リリコの作品
その後にヴェルディのやや強めの役(仮面舞踏会のリッカルドやドン・カルロ)辺りまでやっている。

 

1997年(37歳)
ロッシーニ チェネレントラ  Si, ritrovarla, io giuro(誓って彼女を見つけ出してみせよう)

この人の凄さは、低音~高音まで響きが全くブレないこと。
時々、鼻に引っ掛けるような音が入ったりするのだが、
この人が歌うと、難しいアジリタが超絶技巧のように聴こえないところが凄い。

 

 

1999年(39歳)
ドニゼッティ ランメルモールのルチア 1幕フィナーレの2重唱

相手役のスウェソンが微妙なので余計にヴァルガスが上手く聴こえる。というのはあるが、
それにしても歌詞の明確さは文句の付けようがない。
スウェソンは、Sospirの子音”s”が”su”という母音になるという音大受験生レベルの酷い癖を何とかして欲しい。

 

 

2003年(43歳)
リサイタル

この辺りから全盛期と思われる。
彼のあまり良くない癖は、高音で鼻に掛けるようにしてずり上げ気味になる時があること位で、
その他に欠点らしい欠点はない。
音域や発音に左右されない美しいレガート、言葉の明確さ、端正な音楽作り。パッサージョの処理の上手さ。
彼の歌唱には常に品格がある。

 

2008年(48歳)
インヴァ ムーラ(ソプラノ)とのデュオ リサイタル

この演奏会では、22:20~のマスネ マノンの二重唱がお勧め。
この曲はドラマティックな表現が要求される一方、声が重くなってはいけない。
更にテッシトゥーラも高いのでかなりテノールにとって難しい曲なのだが、
ヴァルガスにはピッタリはまっている感じがする。
インヴァ ムーラは某有名映画で名前が売れたソプラノ歌手ではあるが、
芸能人歌手ではなく、音楽作りも声もそこらのオペラ歌手よりよっぽど上手い一流歌手であることを証明している。

 

2014年(54歳)
メキシコのシャンソン Te quiero dijiste テキエロ ディヒステ (あなたが好き)

50を過ぎて少し声に衰えが見え始めた。
声のつやがなくなってきたり、ちょっと掠れて気味になったりしているが、
とりあえずグラナダで叫ぶ大概のスペイン語圏テノールとの違いは明白だ。
ヴィリャゾンが受けたことを考えると、品の良いラテン人の歌は日本では受けないのかもしれないが・・・。

 

 

2016年(56歳)
オッフィンバック ホフマン物語 クラインザックのバラード

声が少し重くなってきた感じだが、それでも新たな表現を取り入れて、
今までとは全く違った歌い方をしているのが印象的だ。
だが、やっぱり合わない歌い方をすると高音がキツそうだ。

2018年(58歳)
テレビでの演奏カンツォーネなど

ホフマン物語とは違って、いつもの歌い方に戻っている。
それにしても、こう言っては失礼だが喋り声はとても美声とは程遠い。
そして声も決して高くない。
アルフレード クラウスも喋ってる声はこんな感じだったと思うが、
そういうことを考えると、我々日本人の感覚で良い喋り声というのは、
実は喉には負担を掛けている声なのかもしれない。

 

 

最後に、私がヴァルガスを生で聴いて一番驚いたことを書かせて頂くと、
彼は、私が今まで聴いたテノールの中で低音が最も遠くまで飛ぶ歌手かもしれない。
東京文化の5階でも、五線の下の方の音(EsとかF辺り)が高音と同じ密度で聴こえた。
普通、ソプラノやテノールは五線の下の方の音はそんな聴こえないものなのだが、
本当にあれには驚いた

オペラではないが、ウェストサイドストーリーのマリアで彼の低音の響きが伝わるかもしれない

聴いての通り、大きい声でも太い声でもないのに、マイクを使ってるかのように
艇音が広がるように軽く響くのである。
この低音はテノールにとって理想的だと私は考えている。

 

 

 

CD

デビューアルバム。
私がこのCDを港区の図書館で発見したのが彼の声との出会いでした。

ロベルト デヴリューのアリアが特に素晴らしい。

ノリントンが振ったイドメネオ。演奏全体の評判が良く、ヴァルガスも勿論良いです。

 

イタリア古典歌曲を比較的自由なアレンジや装飾を加えて歌っている中々面白い趣向のCD
ダ・カーポアリア(A-B-Aの形式)で書かれた曲は、再現部で装飾を付けて歌うのが当たり前だったでしょうから、
こういう自由な演奏はもっと一般的にやっても良いのかもしれません。

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