現在を代表するロッシーニテノール Javier Camarena

Javier Camarena (ハヴィエル カマレーナ)は1976メキシコ生まれのテノール
最近はメキシコに優れたテノールが頻繁に誕生しているが、この人もその一人
その明るく軽い声質はウィリアム マッテウッツィ ⇒ アントニーノ シラグーザの系統と言えるが、
アジリタの技術は彼らよりも更に上かもしれない。

ロッシーニ チェネレントラから Si Ritrovarla Io giuro(誓って彼女を探し出してみせよう)

実に自由自在に声をコントロールできているのが分かる
これは柔軟で優れた楽器を持って生まれた才能と言う意外にないが
後悔された練習風景を見る限り、非常に丁寧に発声練習をやっている。
まぁ。これは一流歌手なら当然なのだが、このアジリタの技術がどのような練習によって形成されたのかを知るヒントにはなるかもしれない。

発声練習についての解説と実践映像

このように、技術と高音、明るい音色が揃ってロッシーニ歌いとしては言うことなしの彼だが、
個人的には、サルスエラがかなり好きである。

特に、Maria Greverという女流作曲家が作った「Jurame」は最高である。

国際的に活躍していても流れる血は変わらない
色んな歌い手の演奏を聴いていると。
「上手い」とは違う次元で、明らかに違うスイッチが入るというか、
特別な想いを持って演奏している曲というのがわかるものだ。

このMaria Greverという人はメキシコの歌い手にとっては特別なのだろう。
同じ歌詞、同じ作曲家でも違う編曲版を同じメキシコ出身の名テノール、ラモン ヴァルガスも歌っている。

 

後はアルゼンチン タンゴを歌うマルセロ アルヴァレス

こういう演奏は、好き嫌いとは別に、他の国の歌手にはこうは歌えないだろうな。
という演奏をする。
それがピアノではショパンのマズルカとかポロネーズみたいなモノなのだろう。

カマレーナの話に戻そう
軽く明るい声のテノールというのは、フローレスでもそうだが、
上手いけど何を歌っても同じように聴こえてしまうことがある。
例えば、ベッリーニの清教徒 フィナーレ

特に喜劇ではない作品を歌った場合は、作品の求める声との親和性が今一つなのだ。
この作品もその一つで、ディナーミクも高音のノビも申し分ないが、言葉に対する力感が弱い。

例えば、サルヴァトーレ フィジケッラの演奏と比べてみよう

上手さという面ではカマレーナの方が上だろうが、ドラマの表現という面で見れば、フィジケッラだ
カマレーナの歌は熱狂を呼ぶことは出来るかもしれないが深い感動を覚える演奏にはならない。
軽い声の歌手は難しいパッセージや高音といった技術的な面では有利だが、その分言葉に力を与えるのには苦労する。

だからこそ私は彼のレパートリーの中ではサルスエラが一番素晴らしいと考えるのだ。
今後間違ってもプッチーニを始めとしたヴェリズモ作品には手を出さないことを祈りたい。

この声を保ち続ける限りは、ロッシーニ、ベッリーニ、ドニゼッティの喜劇作品ではトップに君臨し続けられる。

間違ってもこうやってNessun dormaとか歌いまくっちゃダメですよ

 

それでも、決して重く歌ったりしないトコは流石だし、フォームも完璧なんですけどね。

Nessun dorma最高音”H”を出しているところ

 

お勧めCD
この人もまだまだCDは少ないが、お勧めはリサイタルの録音
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「Jurame」を初めて聴いたのもこのCDで、それからすっかりこの曲が好きになってしまった。
明るく、情熱的で若々しい歌声は聴いていると単純に元気を貰える。
ただ有名な曲を並べただけではないのもお勧めできる理由。

 

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