イタリア人歌手の発声がかなり危機的な状況である証拠(テノール編)

昨日はイタリア人ソプラノ歌手の発声が、国内の一流歌劇場で主役を歌っているような人でもかなり崩れていることを見てきましたが、本日はテノールです。

イタリア人テノールと言えば、オペラ史の中でもある意味一番のブランド力を持っていると言えると思います

そんな彼等ですが、現在もそのブランド力は衰えていないのか。

それともソプラノ同様に他国の歌手との激しい競争に晒されてて、かつての繁栄は影を潜めているのか。

今回も幾つかのイタリア国内の劇場で主役を歌っているイタリア人歌手を紹介していきます。

 

◆Teatro Verdi Trieste (トリエステ ヴェルディ劇場)

耳の早いオペラファンは
今年2019年の秋に来日公演が行われるということで、
この劇場に注目している方もいるかもしれません。

 

 

 

Francesco Castoro(フランチェスコ カストーロ)

ハマった時は良い声なんですけどね。
時々鼻に入ったり、
高音は良いのですが、中低音でポジションが変わってしまうので、
今一つ安定感がない。
ブレスが短いのか、やたらせかして歌っているようでもあり、
ディナーミクも殆どない(ピアニッシモとかできない?)
声は良いけど歌は上手くない。といったところ。

 

 

ドニゼッティ 愛の妙薬 ネモリーノ役

 

 

 

Federico Buttazzo(フェデリコ ブッタッツォ)

 

プッチーニ ジャンニ スキッキ リヌッツィオ役

 

 

 

 

Antonino Siragusa (アントニーノ シラグーザ)

日本でもお馴染みの親日テノールのサラグーザ
この人は10年以上声が全く変わってない。
やっぱりレベルが違います。
一流のロッシーニテノールでもあり、CDも何枚か出している

 

ベッリーニ 清教徒 アルトゥーロ役

 

 

 

Piero Pretti

 

リリコスピント~ドラマティコの役で結構売れているテノール
粗がなく、無理に中低音を鳴らそうとせず、言葉もしっか聴こえるので良いテノールではあるのだが、
欲を言えば、音圧でティンブロ(テノール独特の力強い高音の響き)を作らず、自然に響きを前に出せれば良い歌手になる。
このポジションではディミヌエンドを使おうとすると、どうしても声を抜く方にしかいけないしレガートもまだ甘い。
シラグーザとの響くポイントの違いが彼の課題である。

 

 

プッチーニ 蝶々夫人 ピンカートン役

 

 

 

Dario Prola(ダリオ プローラ)

 

 

ビゼー カルメン ドン・ホセ役

 

 

余談ですが、この劇場でも日本人歌手が歌っています。

Motoharu Takkei(武井基治)テノール
最近の演奏動画がないためここにはアップしません。

Rinako Hara(原 璃菜子)ソプラノ

 

 

 

◆Teatro Carlo Felice(カルロ フェリーチェ劇場)

 

Francesco Meli(フランチェスコ メーリ)

現在イタリア人テノールで最も売れてる歌手の一人と言えると思いますが、
如何せん、軽い声なのに合わない曲を歌いまくって、カレーラスの物まねみたくなってしまった。
こういう歌い方をするイタリア人テノールが有名になってしまっているのも印象としてはマイナスか。

 

 

 

 

Matteo Desole (マッテオ デゾーレ)

 

 

 

以上 ヴェルディ シモン ボッカネグラ ガブリエーレ役

 

 

 

 

Matteo Macchioni(マッテオ マッキーニ)

マジで?
同じ名前の別人かとも思ってしまうが、この人で間違えなさそう。
ポピュリズムはイタリアオペラにも浸食しているのだろうか?

 

 

ドニゼッティ ドン・パスクワーレ エルネスト役

 

 

 

 

Diego Torre(ディエゴ テッレ)

 

イタリアでもこういう痛い歌い方をするテノールが主役をやっているという
しかも2つの公演で・・・演目の内容以上それがそもそも悲劇だ。

 

 

プッチーニ トスカ カヴァラドッシ役

マスカーニ カヴァレリア・ルスティカーナ トゥリッドゥ役

 

 

 

 

Marco Berti(マルコ ベルティ)

この人は重い役を歌うイタリア人テノールの中では現在トップクラスだと思います。
若干癖のある声と、ややコペルト(かぶせる)気味の声で好き嫌いは分かれるかもしれませんが、
勢いや圧力で高音を出すことはせず、しっかりしたフレージングで重い役を歌えるので良い歌手です。
このアリアは始まってすぐ歌わなければならず、
アイーダ全曲をやる場合、歌手はまず喉が温まってないので、
中々上手い演奏はありません。
全くヴェルディは酷なことをテノールに強いりやがりますね。

 

ヴェルディ アイーダ ラダメス役

 

 

 

 

北ばっかりだったので南の劇場の主要歌手も抑えておきます。

Teatro Massimo di Parelmo

 

Giorgio Misseri(ジョルジョ ミッセーリ)

このアリアだけしか歌わないなら良い歌手です。
しかし勢いで歌うだけでは歌が上手い。とは言えないのが難しいところ。

 

この通り、ネモリーノなんかを歌うと発声の癖が露呈します。
最後のカデンツァなんて、完全に鼻に入れてるのが良くわかりますね。
この歌い方ではこういうアリアは上手く歌えないのです。

 

ドニゼッティ ファヴォリータ フェルナンド役

 

 

 

Carlo Ventre(カルロ ヴェントレ)

新国でもオテッロを歌ったことがあるので聴いた方もいるかもしれません。
この人も現在のイタリア人テノールの中ではかなり上手い方だと思います。
強い個性はありませんが、良いテノールです。
※相手役が酷すぎて上手く聴こえるとかではありません。

 

プッチーニ トゥーランドット カラフ役

 

 

 

こんな感じでしょうか。

こうやって聴けば、女声より断然男声の方がイタリア人は上手いのがわかります。
最後の重唱なんかも、
アムネリスの声が揺れ揺れで最後の伸ばしている音が全く合わないという悲惨さは耳を塞ぎたくなります。

とは言え、他国のテノールに比べてイタリア人テノールが圧倒的に上手いか?
と聴かれれば疑問です。

特に心配なのが、レッジェーロ~リリコレッジェーロの良い歌手が不足していること。
持ち声で一辺倒な歌を歌ったり、鼻に入れたりする歌手が多い。
そういう意味では、ベルカントの神様とCDに謳い文句が書かれたタリアヴィーニのような声は絶滅してしまったのではないかと心配になります。

 

Feruccio Tagliavini

 

この人はリリコレッジェーロですが、実は一番多く歌った役はカヴァラドッシなのだそうです。
つまり、デル・モナコやコレッリが現役で活躍していた時代でも、
こういう声でカヴァラドッシを歌って評価されたのです。
この事実は個人的には大きな意味があると思っています。

 

 

 

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